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井上ひさしのチェーホフ観

 『せりふの時代』夏号で『ロマンス』の作者井上ひさしのインタビュー記事が掲載されている。

「チェーホフ先生、あなたは笑える芝居のつもりで書いたかもしれませんが、舞台に立ち上げてちゃんと上演すれば、悲しくて泣けてくるではありませんか」というのが実は正しい答えなんです。あの四大戯曲を書いたのは晩年ですから、若いころの、力任せに無茶苦茶なドタバタ小説を書いていたエネルギーはやっぱり失っていたわけです。誰でもそうですけれど、人生の中で一番張り切って世の中と直に衝突する、あの感触は取り戻せなかった。そのかわり彼は、年季の入った才能を自分のものにしていたんです。愚か者ばかり登場して、愚か者がその愚かさゆえに、悲しい結末を迎える芝居ではあります。『三人姉妹』なんて、バカな娘三人がモスクワに行けばなんとかなると思って、モスクワモスクワと言ってるうちに、家を失って孤児になり、バラバラになってしまう話ですよね。これをそのまま書けば喜劇になったんだけれど、彼の才能がそうはさせなかった。三人の姉妹が舞台に揃って、「二百年後、二百年後には私たちの苦しみが・・・」とか言われれば、やっぱり誰だってジーンときちゃうんです。土台には喜劇の構造をしつらえるんだけれど、才能がそれを裏切って叙情劇に作り上げてしまう。そういう皮肉なメカニズムがあったんではないでしょうか。」

 晩年っていっても、40代だもんな。尊敬するひさしではあるが、ちょっと首をかしげてしまう。病を背負って、死を覚悟していたかもしれないが、作家としては思うことを思うように書けた年齢ではないのだろうか。若い時と違い、作品もコントロールできたのではないか。でも、ひさしが言うんだからなァ・・・。

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コメント

毎日暑いですねぇ。

「せりふの時代」を以前こちらで先生に薦めていただいて今購読してるんですが、私にはまだまだ難しいです(笑)
でも内容を読みながら常に湧いてくる感情は「何か面白いことをしでかしてやりたい!」という欲求です。

難しいけど、すごく興味深いし、面白いです!

では、お体に気をつけてくださいね!
失礼しましたぁ~!

投稿: いよ | 2008年7月 8日 (火) 23時29分

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