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チェーホフ『三人姉妹』を読む

 お父さまはちょうど一年まえ、それも5月5日の、あなたの「名の日」になくなったのね、イリーナ。

 『三人姉妹』はこの台詞で始まる。そういいえば、今まで読んだチェーホフ作品に父親はいなかった。明日読む予定の『桜の園』を開いて登場人物をみると、やはり、父親はいない。

 チェーホフは、父親の店がつぶれ、逃げて、他の家族はモスクワに移住し、16歳から19歳まで、孤独で過酷な3年間を故郷で過ごした。19歳の時に奨学金でモスクワ大学医学部に進み、家族と一緒に住むようになってからは、彼が「家長」として家族の生計を支えた。チェーホフは44歳で死去するが、妻オリガとの間に子どもはいない。彼の生活には「父性」は欠如していた。チェーホフ作品の父親不在については格好の論文材料になりそうだから、どこかの誰か書いてあるだろうから、そういうのはそれに任せておけばいいだろう。

 3幕は近くでの火事の場面。三人姉妹の家に迫ってくる火事は彼女達を襲う何かを象徴しているのかもしれない。彼女達は火事に抗うことはできない。次第に存在感を増すナターシャも、その何かの部類になるかもしれない。

 「1900年10月、作者は書き上げたばかりの戯曲をたずさえてモスクワに出た。クニッペルはチェーホフがはじめて『三人姉妹』を原稿を朗読したとき、芸術座の面々が”これは戯曲ではなく梗概だ、これじゃ演技できない、役柄がない、ヒントだけだ”と、口々につぶやいたという逸話を伝えている」(池田健太郎「解題」) バカな!

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