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様々な場面、様々な人々(1)

 「泥棒の役が上手いねえ」と佐藤先生は言った。中学の時にどういう経緯かは忘れたが演劇に出ることになって、ぼくは演目も何もかも忘れてしまっているが、佐藤先生の言葉だけは覚えている。次の年も英語劇でピエロの役をしたけれど、何故泥棒だったのか、何故ピエロだったのかはわからない。

 ただ、佐藤先生(女性の英語教師)の「泥棒の役が上手いねえ」は明確に覚えている。「泥棒の役」が上手いのか「役が上手いねえ」なのか、今はぼんやりと考えたりするけれど、褒められたことが少ないぼくにとっては、貴重な一言だった。

 褒めることが大切だという考えは教育現場にもある。ただ、その時に「叱る」とのバランス問題があるのではないか。昔、カウンセラー講座を受けたことがあるが、班ごとの実習の時にぼくは注意された、「もっと大きな声で相槌を打たなければダメよ」と。彼女はそういう経験があるのか、ぼくに注意してくれたが、ぼくは違う。大きな声で「そうだよね」とかいうのはウソなのだ。気持の問題は声だけではなく、視線や姿勢にも現れると思う。

 話が逸れた。

 佐藤先生が褒めてくれたことは、もしかすると、彼女も演劇が好きで、ぼくを認めてくれたのではないか、と、今、強引に結論したい。それを思えば幾つかの場面でしり込みしたことを後悔するけれど、中学時代のあの一言がぼくを励ましてくれる。「歳とっても上手ねえ」と言われたいナ。佐藤先生、お元気でしょうか?

 

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