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様々な場面、様々な人たち(3)

 新宿西口の居酒屋で彼はアルバイトをしていた。そのアルバイトの時間が終わる30分前に行って、飲みながら彼の仕事の終わりを待つ。彼がつきだしに出した「つくね」は初体験だった。それから、二人で飲んだ。彼の住んでいるアパートは、「ねぐら」という方がいいかもしれないが、高僧ビル群が窓から見えた。一等地じゃないか。ロフトだってある。

 彼はある劇団に所属しており、普段はその居酒屋でバイトしていた。一度、彼の劇団仲間の一人を交えて飲んだ。彼は、芝居でふくオカリナをカバンにひそませ、寝静まった新宿の裏通りを歩いている時に、路上でそれをふいた。車も人影もない街にそれは静かに流れた。上手かどうかはわからないけれど、ぼく達の前を踊るように動きながらふく彼は楽しそうだった。プロ(といっても、舞台だけでは食えないけれど)は、芝居が日常をつくる部分もあるんだナと思ったものだ。

 居酒屋バイトの彼はちょっとした都合で九州に帰り、今は照明の仕事をしており、高校演劇にはかなりの理解をもって接してくれている。高校演劇出身で、結婚披露宴の後、恩師の顧問と飲んだ。のんべえで有名な顧問は彼やぼくの話をウンウンと聴いていた。大学で、彼を巻き込んだ形の合同公演みたいなものを仕掛けた時に知り合って、シェイクスピアをロックミュージカルにして上演、その打ち上げの時にも彼は来てくれていた。あのころの元気はなかった。時間の物差しを感じた。

 そこまでにあれこれの時間が流れた。それからもあれこれの時間が流れた。彼は芝居に近いところで生活している。そいう彼を思い出すと必ずオカリナの彼を思い出す。今も芝居をしているのか、それとも、時々オカリナを取り出してさすっては青春時代を思い出しているのか。

 

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