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フルイコの酒場

 以下、渡辺保『声と身体性のゆくえ』より;

 矢野誠一に『フルイコの酒場』というエッセイ集がある。

 矢野誠一はスペインに行ったらば是非ともフルイコという町の酒場に行きたいよ思っていた。

 偶然スペインに行くチャンスが巡ってきて、地図や観光案内で調べたがフルイコという町がない。スペイン舞踊の小松原庸子にも聞いたし、現地の人にも問い合わせたが、だれも知らない。しかし矢野誠一には、一度も行ったことがない「フルイコの酒場」の光景が目に焼きついている。多分写真で見たのだろう。「ちゃんと着飾った男女や、いかにも仕事帰りといった感じの労働者たcが、思い思いの恰好で古いテーブルに自分のグラスや酒を置いて、談笑している。あそこへ行きたい。

 しかしスペイン滞在中にフルイコの町は発見できなかった。

 そして帰国したある日、越路吹雪のイサイタルで、彼女の歌う「ろくでなし」をしばらくぶりに聞いて愕然とした。

 彼女が「フルイコの酒場で、たくさん飲んだから」と歌ったからである。「フルイコの酒場」はここにあったのか。そう思った次の瞬間、矢野誠一はさらに驚く。「フルイコの酒場」は実は「古いこの酒場」だったからである。

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