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倉本聰『父(とん)ちゃん』を読む

 擬音の効果マンが引退と一人娘の結婚が重なる、その周辺を描いている。

 ぼくが初めてテレビドラマを作る場に行ったのは、最後の音を入れるところ。たとえばオフィスのシーンでは、どっかで誰かが話したり、電話が鳴ったりとかの、そういう職場の音を入れる。一番びっくりしたのは、男が坂道を駆け降りてくる、塀を曲がったところで、家の中の女の顔のアップ(山口百恵だった)、そして再び走る男のシーン。音響効果のベテランはそのVTRをみるとアナブースに入り、砂をまいた鉄板に皮靴で立つ。VTRをスタートすると、彼はその鉄板の上を走る足踏み、女の顔のアップでは止まり、また走る。その彼の足音がVTRの男の走りにピタリと重なり、男の足音の完成となった。一回でやってのけた。「さすが」の声。昭和54年のこと。『父ちゃん』はその7年前の放送。

 『父ちゃん』とほぼ同じころ芥川賞を取った畑山博の小説『海に降る雪』も音響効果の人間が主人公だった。それに登場するおばあちゃんが今でも忘れられない。

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