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向田邦子『父の詫び状』を読む

 面白い。今まで本屋の棚で何回か手を出しかけたものの、とどまった理由はわからないが、後悔後に立つ。

 視点が面白い。文章の歯切れがいい。発泡酒だったかのCMで快感は?に松坂が「バットをへし折った時」と答えるのがあったが、向田邦子の直球の切れ味は松坂以上に爽快だ。笑ったり、泣いたり、フムフムだったり、文字を追いながら、心が動いているのを実感できた。

 母と妹の香港旅行を見送るシーンでは、胸を打たれた。「どうぞ、飛行機が落ちませんように。落ちるのであれば帰る時でありますように」という祈り。思わず息を飲んだ。

 向田邦子を読み始めた、と、ある女性にいったら、「彼女、ファザコンでしょ」という言葉が返ってきた。知性と可愛さ(逆の方がよかった、か?)の人からのファザコン言葉に、ああそうなのか、と一つの視点を与えられたような気がする。

 向田の父親のような父親は、もう絶滅しているかもしれない。向田の父親の多くのNOは結局はYESになっているように思う。そして、その結果、向田の内部に潔さとかアッケラカンの強さが育ったのではないか。エッセイを読んでこんなに楽しんだことはない。『徒然草』『枕草子』なんかメじゃない。ぼくが大学に居残りを決めた年の刊行なのに、古さは全くない。普通の人間がそこにいるからだ。

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コメント

同感です。


向田邦子さんと倉本聰さんは、
賢姉愚弟の関係だったようですね。


向田さんのシナリオは、殆ど読んだことがないのですが、エッセイは、大好きです。

投稿: み~け | 2009年4月12日 (日) 19時26分

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