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別れた人

 会いたいと言っている、友人と名乗る人はそう言った。はてどうしたものかと思ったものの、断る理由もないので、喫茶店に会いにいくことにした。
 そこは奇妙なところで、喫茶店というより、美容院の一角にある喫茶コーナーで、奥のの方にはマッサージなのだろうがベッドが仕切りカーテンからチラリと見えた。「襲いはね」その友人は時計を見て言った。遅いも早いもないんとぼくは想いながら、奥のほうに視線をやると、ベッドに横たわっている女性のかすかに見える横顔で彼女だとわかった。「あそこにいますよ。鼻の線でわかります」とぼくはその女性に言った。ベッドの女性は起きて、こちらにやってきた。髪をいじった後、ちょっとマッサージをしてもらっていたと言う。そして、箱を差し出した。「返そうかと思って」「ああ」「持って帰って」。ぼくはそれを受け取ると、家に持って帰った。これでおしまいか? 普段なら行かない。ところがその時はもう一度ノコノコさっきの場所に出かけた。すると彼女は待っていた。「他に用事はない?」「ないわけじゃないけど」「場所変えようか」「何処行く? 何処行きたい?」。そう言ってぼくをまっすぐ見る彼女は綺麗で、「やはり綺麗だな」とぼくは思った。そこで目が覚めた。

 教師になってまもなく出会った女性。だから当時のままなので、綺麗なのだ。その夢の中で、ぼくの住んでいるのがアパートで、その位置が、新しい佐伯警察署と重なるのは、まあ夢の愛嬌か。

 それにしても、受け取ってまた会いに行くというのが信じられない。何故だろう、と、犬と散歩しながら考えた。もう10年以上前、一度夢に彼女が出てきた。ファミレスのような居酒屋のようなところで友達と飲んでいたら、彼女が友人数名と入ってきた。ぼくは身を隠して、彼女は気づかないまま通り過ぎた。ぼくはホッとすると同時に言いようのない後悔が押し寄せた。その夢の記憶がまた会いに行かせたのだろうな、そう思わないか、と、ぼくは犬に同意を求めた。犬の反応は夢よりあえかだった。

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