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別役実』東京放浪記』を読む

 もし、という仮定はあまり意味がない。特に「あの時ああしていたら、今はこうではなかったのに」という仮定法過去完了と仮定法過去を使った思いは、着地点がなく、ため息をつくしかない。ただ、齢を重ねるにつれ、その手のことが増えていく。もし別役実が外語大学の受験に失敗して早稲田に入っていなかったら、日本の演劇はある部分が欠落しているかもしれない。

 別役が日本の演劇をダメにしたとか言ったのは、つかこうへいだったか。つかとは演劇の指向性が全く異なるからそう思うんだろうなァと思うくらいだ。ぼくは別役の戯曲をかなり持っているけれど、正直なところよくわからない。わからないのに読み続けるのは、ある感触があるからだと思う。そして、別役のエッセイは面白く、それが別役戯曲への関心を支えているような気がする。

 高校演劇の全国大会で向かいの席に座って、イワガキを美味しいと言いながら食べる姿をよく覚えている。タバコもよく吸っていた。この本の中でパーキンソン氏病にかかっていると告白している。喫茶店での執筆がままならないようだが、着実に進化するというか、もうすでにある領域に達しているというか、そういう別役を確かめることができた一冊だ。

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