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演劇右往左往~1977年 『藪原検校』②~

 『藪原』の時は、部員も多く、なおかつ経験者が多くなっていたし、加えて部員の意気が高かった。ぼくは今まで何度も『藪原』の上演希望を漏らしてきたが、それは多分、この時の上演の記憶が濃厚に残っているからだと思う。

 お市をダブルキャストでの2回公演。カット場面は一か所のみ。だが、前回より上演時間は30分ほど短かった。時間を競う訳じゃないけれど、無駄がなかった、と、思いたい。

 中津出身の梶原(部室で飲んだりの時は山崎ハコの『サヨナラの鐘』(だったか・・・)を毎回リクエストされたものだ)が、前回ぼくが演じた塙保己一を演じた。主人公の杉の市と場面で、保己一はサトイモを食べている。楊枝で刺して口に運ぶことで、食べ汚さないためだと説明する。ぼくの場合、サトイモがなくてカボチャだった。3回公演の最初で杉の市の「何を食べているんですか」に「サトイモ」と答えたら、客席から「カボチャだとう!」という声が飛んだ。それで、次からは「カボチャ」と答えようとするのだが、出てこない。沈黙。ようやっと出てきた経験があった。そういうことがあったので、そのまま梶原に伝えた。そしたら、ほぼ同じことを繰り返した。言わないほうがよかったのかもしれない。

 杉の市を演じた山本は、ヌーボーとしていたが、それが悪どいことをする役柄にはよかった。彼は近視がひどく、デートの時にはそれを外した。彼女とホテルに行こうとして入っていったら、どこかの会社の社員寮だったというエピソードがある。

 今とは違いアナログの世界。形態もインターネットもない時代。移動するにも時間がかかった。ただ、じゃああの頃困ったかというと、そうでもない。それが当たり前だったから、苦にはならなかった。ところが、今、あの頃のことを考えるとシンドサが募る。でもでも、あの頃のシンドサを全く苦にしなかったことが情熱のささやかな証だと信じる。

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